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記事: HERALBONY×KAPOK KNOTトークイベント

HERALBONY×KAPOK KNOTトークイベント

今季、様々な方達とコラボレーションが実現しているKAPOK KNOTの新たな取組みとして、株式会社ヘラルボニーが運営するアートライフブランド「HERALBONY」と、KAPOK KNOTのコラボレーションが実現し、アートコートが生まれました。その発売を記念して行われた、ヘラルボニー代表の松田崇弥さんとKAPOK KNOT代表の深井喜翔がトークイベントの様子をお届けいたします。

 

〈目次〉

  • 登壇者のご紹介
  • アートライフブランド「HERALBONY」について
  • トークイベント
  • 終わりに 


登壇者のご紹介

ヘラルボニー代表 松田 崇弥(まつだ たかや)

小山薫堂が率いる企画会社オレンジ・アンド・パートナーズ、プランナーを経て独立。「異彩を、放て。」をミッションに掲げる福祉実験ユニットを双子と共に設立。岩手と東京の2拠点を軸に福祉領域のアップデートに挑む。ヘラルボニーのクリエイティブを統括。誕生したばかりの娘を溺愛する日々。日本を変える30歳未満の30人「Forbes 30 UNDER 30 JAPAN」受賞。日本オープンイノベーション大賞「環境大臣賞」受賞。

 

KAPOK JAPAN代表 深井 喜翔(ふかい きしょう)

2014年慶應義塾大学卒業後、ベンチャー不動産、大手繊維メーカーを経て、家業である創業75年のアパレルメーカー双葉商事株式会社に入社。現在の大量生産、大量廃棄を前提としたアパレル業界に疑問を持っていたところ、2018年末、カポックと出会い運命を確信。KAPOK KNOTのブランド構想を始める。1日に10回以上「カポック」と発する自称カポック伝道師。

 

アートライフブランド「HERALBONY」について

【アートライフスタイルブランド「HERALBONY」概要】

ブランド名「HERALBONY(ヘラルボニー)」という聞き覚えのないその単語は、知的障害がある両代表の兄・松⽥翔太が7歳の頃に⾃由帳に記した謎の⾔葉。そのため「ヘラルボニー」には「⼀⾒意味がないと思われるものをの世の中に新しい価値として創出したい」という意味を込めている。障害のある作家のアートデータを活用し、ハイブランドのアパレル用品(スカーフ・バッグ・ネクタイ等)をプロデュース。日本各地で展開するリアル店舗と越境ECにて販路を拡張している。全日本仮囲いアートミュージアム事業で掲出したアート素材をアップサイクルするサスティナブル商品も手掛ける。

ECサイト:https://heralbony.com/

 

【株式会社ヘラルボニー概要】

「異彩を、 放て。」をミッションに、 福祉を起点に新たな文化を創ることを目指す福祉実験ユニット。日本全国の障害のある作家とアートライセンス契約を結び、2,000点以上のアートデータを軸に作品をプロダクト化するアートライフブランド「HERALBONY」、建設現場の仮囲いに作品を転用する「全日本仮囲いアートミュージアム」など、福祉領域の拡張を見据えた多様な事業を展開。

公式サイト:https://www.heralbony.jp

トークイベント

KAPOK KNOT・HERALBONYのブランド説明から始まった当イベント。

それぞれの代表がブランドが生まれた背景や想い、実現したい社会など、序盤から盛りだくさんの内容に真剣に皆さんが耳を傾けていらしたのが印象的でした。

 

松田)深井さんがカポック農園のあるインドネシアに赴き、4時間かけてようやく現地の方とお会いできたなどエピソードをお聞きして、改めてKAPOK KNOTさんのブランドが0から生まれた背景やエピソードを伺えると嬉しいです。

 

深井)それで言うと、今日僕が絶対に話したいなと思っているエピソードが1つありまして…。

僕大学時代に毎年、宮古島の福祉施設に訪問していたんです。福祉施設の方と一緒に施設の方達が作る、サラダほうれん草がもっと宮古島内で売れるようにマーケティングをお手伝いしていたんです。その頃僕はソーシャルビジネスを学んでいて、ビジネスと社会貢献を両立するんだと意気込んでいたのですが、施設の理事長さんから言われたのは、「障がい者の方が作っているという文脈を抜きにして売れるようにして下さい」というお題でした。

当時、ストーリーマーケティング(商品やブランドにまつわるメッセージを届け、共感を生みながら行動を促す手法)が謳われる全盛期だったので、「ちょっと待て」と(笑)大学で学んだことを実践しに来たのにストーリーを伏して売るの?と思ったんですけど、理事長さんの想いとしてはストーリーではなくて、本質的にモノが優れていて、良いと思って購入していただけるようなコミュニケーションを考えて欲しいということを言われていたんです。

当時は難しいながらもサラダほうれん草があまり知られていなかったので、おすすめの調理法を発信したり、現地のスーパーの前にレシピ置いたりと色々取り組みました。施設の方達からはこうした取り組みが求められていたんですけど、この経験が当時の僕にはめちゃめちゃ大きな経験になりました。

障がい者の方が作っているかどうかだけじゃない文脈で売れるようにすることが大事で、本質的な部分を福祉施設の方たちの考えの中で、前提として動いていました。ビジネスの場合、もっとそれを意識しないといけないと思えたことがとても大きな経験となったので、ビジネスのキーポイントの一つとして障がいというものが学生時代からありました。

 

松田)なるほどですね。それは全然知らなかった。

自分は起業する前に「NUKU」というネクタイブランドを立ち上げたのですが、このブランドは当時うちの兄の周りの福祉施設さんで作られている革細工があって、「凄い時間をかけて作ったんだろうな」と思えるものが300円とか革の素材の方が高いと思える価格で売られていたんです。正直あまりかっこよくはなくて、ただそれは知的障がいのある方のセンスがないからできないのではなくて、プロデュースする側の裁量でどうにかなるんじゃないか、という仮説からブランドが始まっているというのはありますね。それが25歳、5年前の話です。

僕は理事長さんとはまた違っていて、「異彩を放て」というミッションのように普通じゃないということ、それは可能性だと思っています。知的障がいのある方も健常者も皆一緒ですという考え方よりは、知的障がいがあるからできるんですよ、という風にある種セグメント性を持たせて発信することで、知的障がいへのイメージを変えられるんじゃないかなと思っているので、逆に(障がいや福祉の文脈を)言いまくるという風に舵を切っている点は、理事長さんとの違いかなと思いました。

 

深井)面白いですね。HERALBONYって本当にクールだなと思ってます。それはこれまでも障がい者アートみたいな括りで話すと、色んな人が考えたことはあると思うんです。こうしたら面白そうとか、こうすればより幸せな社会になるんじゃないかと考えるけど、結果やってこれなかった。HERALBONYさんはそんな中で、手ごたえやいけるかもと思ったポイントはありましたか?

 

松田)ビジネスとしていけるかもと思ったというよりは、知的障がいのある方を兄弟に持つ方やそのご家族から、「こういうの待ってた」というご連絡を沢山頂戴したことで、ビジネスとして成立するよりは勝手に使命感を感じていたという部分があります。なので、初めから使命感を持ってやるぞ!って感じではなくって、「こういうことだよね」という共感のお言葉をいただいて徐々に「こういうことなんだ」と実感していきました。

逆に深井さんもカポックという素材に目を付けたわけじゃないですか。それがいけるんじゃないかという実感にどう変わっていきましたか?

 

深井)同じ質問をしておいて恐縮なんですけど、全く同じです。ご支持いただいて、「こういうの欲しかった」「広めたいからボランティアでいいから何か手伝わせて」と言ってく出さる方が増えてきたんです。その時に、ビジネスでいけるかどうかということは度外視に、「これで頑張ろう」と思えましたね。

 

松田)コラボというところで、若手建築家として日本で一番きている谷尻誠さんとコラボダウンを展開されたりと、KAPOK KNOTさんは本当に凄いなと思っていて、コラボはどういったつながりの中で生まれてくることが多いですか?

 

深井)つながりの中で言うと、企業さんと企業さんというスタンスで関わりが始まると中々難しいんですよ。HERALBONYさんもイベントでたまたま、HERALBONYさんのメンバーの方がKAPOK KNOTを着てくださっているっていうのを知って…

 

松田)そうなんですよ!うちのメンバーがHERALBONYのチャットツールにも「買いました!」って発信していました。

 

深井)僕はそれをTwitterでお見かけしてて、HERALBONYさんが褒めてくださってるというのをチーム内で流したら、「HERALBONYさんめっちゃいい!」となり、話せたらいいねと言っていたところ、とんとん拍子で話が進んで一緒にコラボさせていただけることになりました。

フラットにお話をしていって、同じ方向を向いてるから一緒にコラボしようってものがほとんどで、無理にコラボを組みに行こうとすることはないですね。そういったコミュニケーションが多いので、数は多く出せないんですけど熱量の高いプロダクトのコラボを出せるっていうのは有難いことに多いですね。

 

松田)人と人との出会いの中で生まれてくるものが圧倒的に多いということなんですね。

 

深井)今の時代ってSDGsに代表されるように世界で目指すゴールがあるけど、個人や一社一社の活動じゃ絶対に解決できないよねってなってるから、全社会的なゴールとして定められているわけじゃないですか。なので自分たちだけでやろうとは思っていなくて、無理だということが前提としてある中で、社会・企業は営利目的の側面もあるので、まずは自分たちの会社のリソースだけで、どうやって実現できるかを先に考えがちです。

でもそうではなくて目的が先に来て、どういうことを実現したいかっていう選択肢の中に自分たちの事業があるし、そこで繋がらなければいけない人がいたら当然繋がるべきだよね、っていう風に考えてやるべきじゃないかなと思いますね。

 

松田)そうですよね。少し話が変わるのですが、最近僕が特にダイバーシティインクルージョンは理解することが正解という社会的な構造を作ったんじゃないかなと思っていて、例えば僕が中学生の頃、自閉症スペクトラムのことをスぺという風に揶揄していたりとか、今だったらどうかと思うんですけど、自分たちも分かっている領域の中だったら「ダメだろ」となるけど、他の領域が数多出てきた時に身動き取れなくなってくるなという感覚もあるんですよね。

性別、年齢、障がい、国籍などの外面の属性や、ライフスタイル、職歴、価値観などの内面の属性にかかわらず、それぞれの個を尊重し、認め合い、良いところを活かすこと

 

深井)とても分かります。例えば太陽光エネルギーが是だみたいな話がありますが、分かんないですけどもしかしたら地球上の地熱を奪っていて地球が冷めていく、ということがあるかもしれない。それって分からないじゃないですか。その分からない状態を悪しとしてしまった瞬間に、実は自分達の今やっていることも悪かもしれない、ってなるから分かっている・分かっていないだけで判断するのはやばいんですよね。

 

松田)そうなんです。そういうのを最近すごく難しいなぁと思います。

 

深井)めっちゃ分かります。だからこそ多様な人たちとものづくりをすることはとても重要だと思っています。うちのチーム内でHERALBONYさんって何が凄いんだろうねって話をしたことがあって、その時にキーワードとして出たのが「めっちゃ綺麗に縁側を作ってあるよね」って話になったんです。

 

松田)縁側…?

 

深井)縁側って家にあって、ぷらっと腰掛けられる設計になってると思うんですけど、その腰掛けるスペースがとても気持ちよく設計されているよねって話になったんです。まず家があって、庭があって、縁側から見える景色が一緒であって、お茶菓子としてのプロダクトとの接点が多くあって、定番でいるおばちゃんのような感じでお二人が東京と岩手と2拠点でいらっしゃって…居心地の良い家の縁側に近い設計がされているから、これだけ多くの方や企業とコラボできているんじゃないかなぁという話になりました。

 

松田)お話が上手いですね(笑)お茶菓子なんて言われたの初めてです!素晴らしいお話を皆さんに聞いていただけて有難いです。自分たちもやっぱり結局のところは啓発がやりたいんですね。リアルなところを言うと。でも障がい者の歴史って、脳性麻痺の方が国会で抗議して権利を勝ち取ってきたみたいな背景があるように、差別をするなっていうことって何か動くかもしれないけど、ある種分断を深めていくことでもあると思うんです。

HERALBONYは、駅などにアートが飾ってあって、知的障がいということはどんどん明記して行くと決めているので、何気ない日常の中に啓発機能を持った作品がが介在することでイメージが変わっていくことを目指しています。運動ではなく美しい啓発活動みたいなことをやっていきたいと考えているので、「縁側」という風に言っていただけるのは本当にありがとうございます。

KAPOK KNOTさんの中でここだけは譲れない思想、哲学などってありますか?

 

深井)結構僕、寛容だなと思っていて、というのは業績とかには寛容ではないんですけど、うちのメンバーが考え方が多様な方が多くて、色んなライフスタイルを志向する中で全員譲れないものがそれぞれあるわけです。それをちゃんと対話をしようって話をしてて、ただそれって意思決定のスピードが落ちてしまうんですよね。昔の企業って3年やってから文句言えって形でも成り立つんですけど、それをKAPOK KNOTでやると、対話が生まれなくなるから対話しようねっていう前提から始まっています。対話することで意思決定のスピードが若干落ちても見返りがあるよね、ブランドに深みが出るし考えが整理できるよねという考えでいます。何か話が出る度に対話しようっていう結論に至るので、企業のカルチャーとして対話を大切にしていきたいです。まだまだ全て出来ているとは思っていないし、妥協してしまっている部分もあるかもしれませんけど、大事にしたいなと思っています。

HERALBONYさんってどんなカルチャーなんですか?僕はみんな底抜けに良い人だなと思っているんですけど、どうやったらそのような方々を育てられるのかなと。

 

松田)尊敬している人と働きたいっていうのが凄いあって、今社員が15名、副業10名ほどなんですけど、一番誇れることとして正社員になったメンバーは3年間誰も辞めていないっていうところですね。3年という短い期間ですけど心から嬉しいなと思います。「主人公は常に自分である」っていうカルチャーコードを定めていて、それはやっぱり僕たちって障がいのある人のために、ってなっちゃうところがあるんです。でも僕は「~のために」には限界があると思っていて、自分が純粋にワクワクする、自分が主人公でやりたいことをやるのが大事だと思っています。そこは凄く大切にしてるかなと思います。

そろそろ時間の方が近づいてきたので、お互い一言ずつ最後に話しましょうか。

 

深井)本日はお足元の悪い中ご来場いただきありがとうございます。HERALBONYさんとのコラボはうちのチームが盛り上がったコラボレーションになっています。それはお互い実現したい世界が一緒に取り組むことでより近づくんじゃないかと思って実施していることになります。今日のお話を聞いて良かったなと思っていただくのも大事ですし、それを大切な方に一言でも話していただけるとそこでまた一つ輪が生まれるので、是非そうしていただければなと思います。本日は本当にありがとうございました。

 

松田)お互いの強みを生かしながら商品が生まれることにとてもワクワクしています。障害のある方はできないことをできるようにしていく、特に重度の知的障がいのある方は健常者に近づけていくことが大切だと思われていた節があると思うんです。だけど、僕らは既にできていることや素敵なものに、こちらが社会的な文脈を付けさせていただいて、逆に依存していくというところを目指していますので、これからも皆様と依存しあいながら一緒に育っていければなと思っています。本日はありがとうございました。

 

終わりに

いかがだったでしょうか。コラボの背景や、それぞれのブランドの想いなどボリュームたっぷりのイベントとなりました。KAPOK KNOTの公式Instagramにて、トークイベントのアーカイブもございます。

こちらからご覧いただけます➡https://www.instagram.com/kapok_knot_jp/channel/

是非トークイベントが行われた会場、日本橋のHERALBONY SHOPにも足を運んでみてください。小さなミュージアムのような空間に、HERALBONYの魅力が詰まった店舗になっています。

またコラボアイテムは外観はKAPOK KNOTにて通常販売しているチェスターコートと同じに見えるのですが、裏地がHERALBONYさんの作家さんの作品になっている点と、ボタンホールの縫い糸の色がHERALBONYさんのコーポレートカラーになっている点が違っています。

 ボタンホールの縫い糸の色変更はHERALBONYさんからのご提案で、細部までこだわり抜かれるHERALBONYさんの姿勢を感じました。是非チェックしてみてくださいね。

☟コラボアイテムはこちらからチェック☟
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商品名:ART COAT
購入方法:HERALBONY SHOP
HERALBONY ONLINE STORE(https://heralbony.com/collections/art-coat
販売価格:68,200円(税込)
サイズ展開:S,M,L(ユニセックス)
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